2006年11月
カタマランをヒールさせる?
ヨットに乗っていて”ヒールする”とは傾くことで、よく使う言葉ですが、普通には辞書で探してもカカトのことなので、船で使う言葉にはよくあることだけど、どうして傾くことなのかはよく分かりません。

ヨットはイメージでも、たいていの写真でも、セールに風をいっぱいはらませて傾いて走っています。
セールは風を受けると、前進させる力とともに、横に倒そうとする力がかかるので、小さいディンギーでは乗員が風上側に移動して体重でバランスをとるようにして、クルーザーなどでは重心を低くするために固定した重りを装備して傾きを抑えています。

大きく傾くと、セールから風が抜けて効率が悪くなるのと、クルーザーでは食器や積んでいる物が転がり落ちてしまうので、通常はなるべく傾かせないように、工夫や努力が必要になってきます。
NAKIRI号やホビーキャットのようなカタマランでは横幅が広くて、風圧による重心の移動が少ないのでわざわざ重いものを載せなくてもほとんど傾くこともなく走ります。

見た目の優雅さ以外では好ましくない傾きですが、私の場合いつも傾かないカタマランに乗っているせいなのか、たまに搭載の小さなディンギーに乗ってヒールすると、傾くことで意外な発見、傾いて見る、いつもとはちょっと違った風景が楽しいことに最近気が付きました。

その最近まで、4年間ほとんど毎日のようにホビーキャットに乗っていても、一人で乗る場合風上側に座って、カタマランの僅かな傾きを抑えていたのだけど、方向を変えて風の受け方が変わる度に座る場所を移動するのもめんどうなので逆の位置のままでいると、普通の風でもホビーキャットは意外と傾くのです。(レッスンではもちろん、こんなことはしません)

わざと風を取り込み過ぎるセール操作でさらに傾かせると、効率が悪くなって最大スピードは出せなくなるのだけど、風上側の船体が水面から浮き上がってきて、ひっくり返る寸前になってくると、もう内心ドキドキです。
バランスを取って走っていると、日常的でない平衡感覚のずれと不安定さが、頭と体を刺激します。
ビーチからでは、表情までは見えないと思うのだけど、夢中になっていて、いつの間にか顔がゆるんでしまっているのに気がつきます。