2007年5月
海のロマンと現実
古代の船と未来の船が接近遭遇して大海原を走っていることを想像すると、限りなくロマンが広がるのですが、ん?と思うことも実際に目撃してしまったのでここで少しだけ。

”ホクレア号”はほとんど同じ形をしたもう一隻の艇と、支援のヨットとの3隻で行動していて、影武者のような艇にはエンジンも付いていて、よく見るとインマルサット衛星電話のアンテナとGPSのアンテナもあります。
現代のテクノロジーを使わないで、伝統的な星を利用した航海術だけでは到着予定日の歓迎式典にピタリと現れるのは無理なのかもしれません。

出航準備をしている”EARTHRACE”の船体には、スポンサー名がいっぱい書かれていて、ひときわ大きく「100% PURE BIODIESEL」の文字もあるのだけど、たまたまホビーキャットで通りかかった時に、大きな船の陰でタンクローリーから普通のディーゼル燃料を補給しているのを見ました。
パラオでバイオ燃料を精製する工場もないので当然ではあるのだけど。

パラオを出港した”ホクレア号”は遠く見えなくなるまでエンジン付きの艇に曳航されて行きました。
外洋では実際に帆走とスターナビゲーションをしているのだろうとは思うのだけど、次の目的地の沖縄には予定通り到着したようです。

この二つのプロジェクトの偉業は十分に認めているのですが、私のヨットを繋留している小さな湾には世界各地から来ているヨットが集まっていて、たぶん予定もあまり決めていないのだろうけど、何年もパラオに停泊していたり、予定も告げずにいつの間にか出て行ったりして自由な航海を続けている人達がいます。
報道されることもないからあまり知られていないのだけど、日本人も太平洋周遊や世界一周の途中でパラオに寄港する人達が何組もいました。

時間や記録とか、スポンサーに束縛されることもなく航海を続けている彼らや、いつ次の港へ行くのかも決めてなく、パラオを漂流しているような私達は幸せ者かもしれません。