2008年9月
『信じられない航海』
私の航海の話ではなくて、実際の航海を記録した題名『信じられない航海』の本で、15年位前に買ったままになっていたのを、ついに読んでしまった話です。
長編だし、内容も普通の航海記とも違うようだから、これは気合を入れて読まないといけないからそのうち、と思って本棚に入ったまま、パラオに来てからもやはり本棚にあって、表紙だけがいつも見えていて気になっていました。

自分の性格は別にしても、映画や本も暗い内容の物は見ない、読みたくないこともあり、たいていは悲惨になることが多い航海記物は興味があっても読むのには私にとって勇気がいるのと、内容が外洋帆走ヨットで、イスラエルにある海抜マイナス397mの世界で最も低い水域の死海を帆走してから大西洋を渡り、南米の標高約3、800mの高地にあるチチカカ湖を帆走する、もちろん途中はトレーラーなどで陸路を走る計画の冒険も、よくありがちな記録を狙う売名的な目的かもしれない、と思っていたのもためらっていた理由かもしれません。

読んでみると、ヨットをトラックに載せて運ぶという海の男らしからぬ事はしても、実際に何度も一人で大海を渡り、経験を積んだ本物の航海者だというのがわかったことで、何度か途中をとばしたりしながらも、結局は読み返し、時間は掛かったけど最後まで全部読んでしまいました。

暗い気持ちになってしまうのには間違いないから、なるべく高揚した気分の時にと、今までタイミングを待っていたのだけど、どうしてか反対に少し落ち込んでいる時に思いついてしまって、読み始めてしまいました。
想像していたとおり、悲惨な状況になると自分に置き換えてしまって、滅入ってきて本当に気分が悪くなってきます。
そんなにしてまで読まなくてもと途中では思っていたのだけど、読み終えた後で気がついたのは、最悪の気分の時にこそ逆療法してみるのも一つの手かなと思うようになりました。

パラオをヨットで訪れた航海者達もやがて故国へ戻ったり、次の新天地へ向かって去っていくのをいつも見送る側にいて、これから彼らは外洋での苦闘が始まろうとしているのを考えると、ここのパラダイスではあるけど、ぬるま湯に浸かっているような生活をしている自分に、少し鞭をいれる事も必要かなと思っています。